家庭で使われた天ぷら油を回収して航空機の燃料にする。そんな取り組みが自治体で広がっている。航空分野の脱炭素化に向けて、家庭から捨てられる「廃食用油」に注目が集まっている。
7月7日、廃食用油からつくった国産航空燃料の供給開始を記念するイベントが羽田空港で開かれた。全日本空輸の井上慎一社長は温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」を踏まえ、「カギを握るのがSAF(サフ)」とあいさつで述べた。
SAFは、廃食用油などからつくる「持続可能な航空燃料」(Sustainable Aviation Fuel)の頭文字だ。
昨年12月、堺市のコスモ石油堺製油所内に国内初の量産プラントが完成。今年4月から量産を始め、関西空港、中部空港に加えて羽田空港でも供給が始まった。
2050年を目標とするカーボンニュートラルに向けて、航空業界は2030年までに航空燃料の10%をSAFにする目標を掲げる。航空法に基づく航空脱炭素化推進基本方針で22年に定めた。
食用油は元の植物が二酸化炭素を吸収しているので、従来の燃料より二酸化炭素を約80%減らせるとされる。課題はその製造量だ。
資源エネルギー庁によると、航空燃料の10%をSAFにするには年間172万キロリットルが必要だ。一方、全国油脂事業協同組合連合会によると廃食用油は年間50万トン(約55万キロリットル)しか発生しない。
このうち事業系の40万トンは95%が回収されているが、多くは飼料の原料や輸出に向けられている。一方、家庭系の10万トンは9割が捨てられていると言われ、その回収に注目が集まっている。
6月、兵庫県伊丹市役所でS…